医師がヘリコプターに乗って、救急患者のもとへ駆けつけるところから名づけられたドクターヘリ。医療機器、医薬品を搭載したヘリコプターで救急現場へ向かい、医療機関に搬送するまでの間、患者に救急医療をおこなうことができる専用ヘリコプターだ。日本では、2001年の春に正式導入され、現在は48機(2016年12月現在)が稼働中となっている。埼玉県でドクターヘリの運航に携わる、操縦士Sさん、整備士Uさんに日々の業務や、仕事への考え方などをお伺いした。
「私の役割は安全に運航すること。天候判断に気をつけながら安全に飛行するのは、どのヘリコプターでも同じことです。ですが、“救急に携わる”という意味では、やはり他の現場と比べて緊張しますね。日没になり、“出動待機”の時間が終わると、ほっとします」。そう語る操縦士のSさんは、ドクターヘリに乗って10年目のベテラン操縦士。一刻を争う状況下で、もっとも難しいことのひとつが天候判断だという。「天気が下り坂のとき、どうするか。早めに運航できないって判断をしちゃえば安全なんですけど、待っている方のことを思うとそういうわけにもいかないので」。Sさんはユニフォームであるつなぎを着ることについて「チームで同じ服を着ていると、気持ちがまとまります」という。「最近、外部の人から分かりやすいように、操縦士は肩章をつけるようになりました。つけ始めたばかりなので、少し気恥ずかしい感じがしています(笑)」。
ドクターヘリの整備士として、機体の整備から出動中の運航サポートをおこなうUさん。プロとして大切にしていることは、「システム技術に関する情報を集めること。今のヘリコプターは、ネジ締めや油差しのような機械的なことだけでなく、“コンピューターを扱うように”整備しなければいけない。航空業界だけに限らず、様々な最新技術に興味を持って勉強することを、常に意識して取り組んでいます」。Uさんは地面に膝をついたり機体によじのぼったりと、体を大きく使うことが多い。それもあって、ユニフォームで気になる点があれば、細部まで積極的に要望を伝えている。「これまでもいくつか修正のお願いをして対応いただいた結果、だいぶ改善していただいて満足しています」。足元の裾のチャックについては、特に気に入っているとのこと。「普通、チャックは後ろにあると思いますが、前にあることで開けやすく、裾をブーツの中に入れるときにもとても便利なんですよ」。
Sさんはあと1年で定年を迎える。プロフェッショナルの操縦士として心がけてきたことを聞いた。「職場に掲げてある言葉ですが、“やるべきことは確実にやり、やってはいけないことは決してやらない”ということですかね。つい応用に走ってしまったり。基本って毎回だと難しいんです」。責任を背負い、毎日を積み重ねた重みが、その言葉には宿っていた。
一方のUさんはこれからの目標についてはこう話す。「直近の目標としては、新たなヘリコプターの整備免許を取得したいです。機種ごとの免許を取得することで、担当できる機種の幅を広げられるんです。現在、すでに勉強を始めています」。未来を見つめながら、夕暮れの太陽を背に黙々と点検作業を続けるUさんの後ろ姿は輝いてみえた。
お2人が着用していたのは、AUTO-BIブランドのつなぎ服で、倉敷紡績の難燃性素材「BREVANO(ブレバノ)」を使用。防炎性の高い素材ですが、風合いも柔らかく着心地も抜群です。また、救命時に必要な様々な器材を入れるため、ポケットを随所に配置。足元のポケットは、どんな体勢でもすぐに物が取り出せるように付けられたもので、操縦席に座ったままでも使いやすいと操縦士たちにも好評です。NASAの宇宙飛行士が着用するフライトスーツをイメージした、空を愛する男たちのロマンが詰まったデザインです。